
ご出場の皆様、演奏お疲れ様でした。
本日のような形の発表会は、今回が初めての試みでした。アットホーム風な会場のお蔭でしょうか、それとも教室の「身うち」だけだったためでしょうか、今までの発表会にない落ち着いた雰囲気を感じました。プログラムの最初から最後まで、ソロ、重奏、アンサンブル、そして合奏の演奏も、一部メンバーが少々緊張していたようですが、その中でもうまく演奏が出来ていて、皆様の日ごろの練習の成果が十分発揮できていたのではないでしょうか。
苦労が上達と達成感で報われ、流した汗が楽しみに変わり、素晴らしい成果を上げられたと思います。
そんな皆様の努力をしている姿を見て、本当に嬉しく思いました。
また、本日の演奏交流会を滞りなく開催できたのは、発表会実行委員会の係メンバー達をはじめ、ご出場の皆様の熱心なご協力のお蔭です。
最初の運営準備段階から本日の本番に至るまで、月々の合同練習や、会場の飾り付け、諸々の準備作業などを、まじめに、誠実に、互いに協力し合いながら進めて下さいました。本当にありがとうございました。
皆様も御存じの様に、もともと当教室の「第4回発表会」は前回発表会と同じホールで行う予定でおりましたが、3・11の東日本大震災を受け、様々な状況を考慮し、会場と形式などを変更して本日のような形で開く運びとなりました。大震災からもう半年以上経ちましたが、多くの方々の心の中の時計は、まだあの時点のまま止まっているのではないでしょうか。
被災された皆様、そしてご親族、知人の方々の悲しみと比べようもないのですが、直接被災していない地域の人々も、他の国の人々も、心の底から悲しみを感じております。
人間の無能さを強く認識し、あまりにもショックを受けた自分は、地震直後のしばらく間は「仕事」にさえ集中できず、教室でアコーディオンを教える仕事よりも、被災地のため、残された人々のために何かしてあげるべきなのではと自身を責めたり、心苦しくなったりする日々を過ごしました。
しかし、ある休日の朝の偶然が、そんな自分の救いとなったのです。
それは、ちょうど教室から植物の鉢を軒先に出している時でした。地下鉄 後楽園駅方面から教室の方へ、マラソン大会とおぼしき団体が走ってきます。その中の、肩を揃えて走っている二人の女性に目が留まりました。
女性達のうち一人は左手に、もう一人は右手に輪の形にした太い縄を握っています。あまり見かけたことのない格好に、「健康グッツかなあ」などと不思議に思って眺めていました。
そのうちにお二人は目の前まで走ってきて、顔をはっきり見ることができました。その瞬間、お二人の内のお一人が、目の不自由な方であることが分かったのです。しかもその目の不自由な方は、走りながら笑顔で隣の方とお喋りをしているではないですか!
…驚き過ぎたせいというか、感動しすぎたせいというか、お二人が走っていく後ろ姿が遠くなるまでずっと、目を離せませんでした…
あの笑顔が忘れられない! あの走っている姿が忘れられない!
見た感じでは60歳を超えている女性の方が、両目が不自由であっても希望を持ち、未来を確信した顔をしている!
両目は光を捉えていなくても、心に光が灯っているような顔をしている!
教室の中に戻ってから、自分の顔を鏡で見て、「どうしてそんなに違う?! 」と自問しましたが、答えられず、凄く落ち込んでしまいました…
皆様はもしかしたらこのような場面を普通のことと思われるかもしれませんが、違う国で育ってきた自分にとっては貴重な「鏡」となりました。
特に今の自分にとっては強力な刺激薬であり、人間性を学ぶ良い見本であり、常に希望を持ち、前向きに努力を尽くしていく目標でもあります。
これからも皆様がアコーディオンを練習し、より楽しく弾いて頂くために、微力ながらお手伝いを続けさせて頂きたいと思っております。
どうぞ宜しくお願い致します。
本日は本当にお疲れ様でした。ありがとうございました。
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